宵の明星
久し振りにまじまじと眺めた。細い上弦の月のお蔭でいつもより明るく、はっきりと輝いて見えた。西の方角、他に星は見当たらない。月はその陰影を濃灰色にうっすらと映し出し、手術用の縫合糸には少し太くて傷跡が残ってしまいそうだ。
どちらにしても、夜空を久し振りに見るということは、私は常に下を向いて移動しているという事になる。家に帰る時間帯を考えると、毎日月を見ていて普通なのだが。しかも空を見上げてもセンチメンタリズムの欠片すら感じなかった。空ってもっと印象的な存在ではなかったっけ。
ルボックスの量が増えた。春以降場合によってはパキシルの使用も視野に入ってくるかも知れない。セルシンいらないんじゃないかと医師の談だったがどうなるものか分かったものではないのでとりあえず継続して貰った。どうなるのでしょう。確かに症状の面から考えるとセルシンを継続投与するよりルボックスをパキシルにした方が妥当な気もするが如何せん素人なのであまり考えないことにする。